刺し子ジャーナル|文献からたどる刺し子

参考文献一覧

「刺し子ジャーナル|文献からたどる刺し子」では、刺し子そのものだけでなく、布や衣服、裁縫、暮らし、労働、社会背景まで含めて資料を調べています。

このページでは、canohaが実際に調査に使用している主な文献を紹介します。資料に書かれていること、著者や研究者の考察、そこからcanohaが考えたことをできるだけ分けながら読み進めています。

参考文献は、調査の進行に合わせて随時追加・更新していきます。また、新しく確認できた資料や情報によって内容を見直す必要がある場合は、すでに公開している記事についても適宜更新していく予定です。

※出版情報は、canohaが調査に使用している版・底本を基本に記載しています。出版月まで確認できていない資料は、出版年のみを記載しています。

刺し子・染織・衣服を調べる

徳永幾久『刺し子の研究(民俗服飾文化)』

出版社:衣生活研究会|出版年月:1989年7月
刺し子の技法だけでなく、その歴史、地域差、用途、衣生活まで広く扱った研究資料です。canohaの刺し子研究を進めるうえで、最も重要な資料の一つとして繰り返し参照しています。

福井貞子『染織の文化史―木綿と藍― 解説編』

出版社:京都書院|出版年月:1992年12月
木綿と藍を中心に、日本各地の染織と暮らしを実物調査や聞き取りから辿った資料。刺子の風呂敷、雑巾、襁褓など、生活の中で使われた刺し子についても記録されています。

福井貞子『木綿口伝―ものと人間の文化史』

出版社:法政大学出版局|出版年月:2000年3月(第2版)
山陰地方を中心に、木綿の栽培、加工、流通、衣生活、女性の仕事、古布の再利用などを幅広く扱った一冊です。刺し子だけでなく、「なぜ布を長く使ったのか」を考えるうえでも重要な資料です。

瀬川清子『きもの』

出版社:六人社|出版年月:1942年
日本各地の衣服や仕事着、植物から作られた布、重ね着、補修、保温、背守りなどを、地域の言葉や暮らしとともに記録した民俗服飾研究です。

田中忠三郎『南部つづれ 菱刺し模様集』

出版社:北の街社|出版年月:1977年4月
青森県南部地方の菱刺しと衣生活を伝える資料です。菱刺しは刺し子そのものと同一にはせず、麻布の補強や保温、古布利用などを比較するための資料として参照しています。

田中忠三郎『図説 みちのくの古布の世界』

出版社:河出書房新社|出版年月:2009年11月
青森県を中心とした古い衣服や生活布を豊富な写真とともに紹介しています。こぎん刺し、南部菱刺し、刺しこ着、重ね刺し、補修、継ぎ、裂織など、実際に残された布から当時の暮らしを考えるための資料です。

柳宗悦『手仕事の日本』

参照底本:岩波書店(岩波文庫)|出版年月:1985年5月
日本各地に残る手仕事を記録した一冊。こぎん、菱刺、刺子織、刺子着などについても触れられています。地域の技術を紹介する記録と、柳宗悦自身の美的評価を分けながら参照しています。

柳宗悦『民藝とは何か』

参照底本:講談社(講談社学術文庫)|出版年月:2006年9月
刺し子の歴史を直接記録した資料ではありませんが、日用品、実用、無銘のもの、反復する仕事など、「民藝」という視点から手仕事を考えるために参照しています。

布と衣服の暮らしを調べる

柳田國男『木綿以前の事』

参照底本:岩波書店(岩波文庫)|出版年月:1979年2月
木綿が広く普及する以前、人々がどのような素材を身につけ、どのように衣服を使っていたのかを考えるための重要な資料です。古着、麻布、仕事着、重ね着など、刺し子の背景につながる記述を多く含んでいます。

柳田國男『服裝語彙分類案』

参照底本:筑摩書房『定本柳田國男集 第二十九巻』|出版年月:1964年5月
日本各地に残る衣服の名称や分類を整理した資料です。仕事着、袖、前掛、帯など、衣服を地域の言葉から考える手がかりとして参照しています。

柳田國男『農村家族制度と慣習』

参照底本:筑摩書房『定本柳田國男集 第十五巻』|出版年月:1963年6月
農村の家族、労働、制度、慣習について考えるための資料です。衣服そのものだけでなく、「誰が作り、誰が働き、家の中でどのように仕事が分担されていたのか」という背景を見るために使用しています。

柳田國男『雪国の春』

参照底本:角川書店(角川文庫)|出版年月:1956年7月
雪国の暮らしや生活文化を考えるための補助資料として読んでいます。寒冷地の衣生活や地域差を考える際の手がかりの一つです。

柳田國男『母の手毬歌』

参照底本:岩波書店(岩波文庫『こども風土記・母の手毬歌』)|出版年月:1976年12月
女性や子ども、家の中の暮らし、地域で受け継がれてきた文化を考えるための補助資料として参照しています。

菊池貴一郎『江戸府内絵本風俗往来 上編』

出版社:東陽堂|出版年月:1905年12月
幕末の江戸の風俗や暮らしを、文章と挿絵から知ることのできる資料です。仕事着、印袢纏、火消、奉公人など、都市で暮らした人々の衣服を見るために使用しています。

福沢諭吉『旧藩情』

参照底本:講談社(講談社学術文庫『明治十年丁丑公論・瘠我慢の説』)|出版年月:1985年3月
中津藩を中心に、江戸末期から明治初期の旧藩社会を振り返った資料です。同じ武士の中にも身分や暮らしの差があったこと、木綿織や内職、衣服に関する規制などを考える際に参照しています。

エドワード・S・モース『日本その日その日』石川欣一 訳

参照底本:平凡社(東洋文庫・全3巻)|出版年月:1970年9月〜1971年1月
明治初期の日本各地を訪れたモースによる観察記です。当時の暮らしや物質文化を外から見た記録として、他の資料と照らし合わせながら参照しています。

裁縫・労働・社会を調べる

川島裁縫女學校 編『現代和洋裁縫全書―初歩から奥儀まで』

出版社:日本出版社|出版年月:1927年10月
運針、補綴、当て布、古着や古綿の再利用、綿入れ、子ども服など、当時「どのような裁縫技術が教えられていたのか」を知るための資料です。

この本に書かれていることを、そのまま当時すべての家庭で行われていた方法とは考えず、学校で体系化されていた技術と実際の暮らしを分けて読んでいます。

横山源之助『日本之下層社会』

出版社:教文館|出版年月:1899年11月
明治時代の都市下層社会、職人、工女、小作人、家計、内職などを取材・調査した資料です。刺し子を直接扱った本ではありませんが、人々がどのような環境で働き、衣服や古物と関わっていたのかを知るために参照しています。

武部善人『綿と木綿の歴史』

出版社:御茶の水書房|出版年月:1989年6月
綿の伝来から国内栽培、加工、流通、税、産業化まで、木綿を長い時間軸で辿った資料です。

刺し子を考えるとき、「いつ、どこで木綿が手に入るようになったのか」「誰でも同じように木綿を使えたのか」という問題は避けて通れません。その背景を考えるための中核資料として使用しています。

現代の衣服を考える

エリザベス・L・クライン『ファストファッション―クローゼットの中の憂鬱』鈴木素子 訳

出版社:春秋社|出版年月:2014年5月
大量生産・大量消費される現代の衣服について、素材、縫製、価格、労働、生産地、古着、寄付、廃棄までを追った資料です。

アメリカを中心に書かれた本のため、日本の衣生活史を説明する直接の資料としてではなく、現代の衣服を取り巻く状況や、なぜ今再び「直して着る」ことが注目されているのかを考えるための比較・背景資料として参照しています。

時代背景を確認するための資料

『日本史年表』

出版社:吉川弘分館|出版年月:2026年4月(第32版)
刺し子や衣服だけを切り離して歴史を見るのではなく、その時代にどのような制度、産業、社会変化、対外交流があったのかを照らし合わせるために使用しています。

資料の読み方について

刺し子ジャーナルでは、一冊の資料に書かれていることを、そのまま「昔の日本ではこうだった」とすることはしません。時代や地域、身分、資料が作られた目的によって、見えてくる暮らしは異なるからです。

また、資料の中には、実際の記録だけでなく、著者自身の記憶、聞き取り、研究者としての解釈が含まれているものもあります。

そのためcanohaでは、資料に実際に書かれていること、著者や研究者がそこから考察したこと、複数の資料を重ねたうえでcanohaが考えたことを、できるだけ混ぜないようにしながら読み進めています。

また、手元の文献だけでは確認できない情報や、現代の動き、海外での広がりなどについては、博物館・大学・公的機関・学術論文など、できるだけ信頼性を確認できるウェブ上の情報源も調べています。そうして文献だけでは足りない部分を補い、出典を確認したうえで記事に反映しています。

分からないことは、分からないまま残す。そして別の資料や新しい情報が見つかったとき、もう一度考える。

刺し子の歴史には、まだ分からないことがたくさんあります。だからこそ、一つずつ資料を辿っていくことそのものが、この「刺し子ジャーナル」の大切な部分だと思っています。